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ろくでなしの心意気

夢見がちでぼんやりした子供時代
身体が弱く寝込むことが多かったような気がする。

何も無い部屋でひとり
障子を眺めてはいろんな事を想像して過ごしてたから
映画が好きになったのかもしれない。
当時から”悲しい話”や”切ないもの”に惹かれる傾向があり
多分それが今の自分にも繋がっている。

山中貞雄の映画を見たのは10年以上前。
本当にたまたま、偶然の出会い
映画の内容も”山中貞雄”という名前すら知らなかった。
久しぶりに山中貞雄の「河内山宗俊」が見たくなりDVDを引っ張りだす
この映画にはまだ10代の原節子が出ていて何とも可憐で美しい。
ストーリーを少し。


ーー
お浪(原節子)と直は二人っきりの姉弟。
縁日で甘酒を売り日々の生活をしのいでいる
テキ屋の用心棒、金子市はお浪にはいつも優しい。

町の小悪党、河内山宗俊の賭場に
直が入り浸り、家に帰ってこない日が続く
心配するお浪が探しにやってくるが
直は別名を使い出入りしているため
なかなか会う事ができない。

河内山もお浪と一緒に直を探すが
いつもツルんでいるのが直だと気がつかない。
また親身になる河内山を見て
女房のお静はお浪に嫉妬心を抱く。

ある時、直が幼なじみの女郎と心中を図る
が、直だけ生き残る。
身請けが決まっていた女郎だけに
ヤクザは直に身請け金を払えという…
勿論、そんな大金はない。

お浪はその金を払うため
身売りを決意し一人出てゆく。

それを知った河内山と金子市。
将軍家の小柄(こづか)をめぐる話から
金の工面を考えだし、お浪を助けようとする。
企みは見事成功。

しかし、ここから話が一転する。

二人の企みを知らない直は
ヤクザの親分を刺してしまい
助けだしたお浪も女郎屋へ連れて行かれ
大勢のヤクザが河内山の賭場へやってくる。

河内山は直に金を持たせ
なんとかお浪の元へ走らせようとするが
次々と追手がやってきて攻防となり
金子市と河内山が応戦する

直はなんとか逃げ切り
画面の向こう側へと走りさる
果たして直はお浪のもとへ辿りつけたのか!?
…という所で映画は終わっている。



何度となく見ているけれど
この凄まじいラストの下りはいつもドキドキする。

自らの嫉妬心のため
お浪を連れ出した事を悔やむお静は
カラダを張って河内山を守り

追手から直を守り抜くため
細い水路を逃げ惑い
自らすすんで盾となる、金子市と河内山。

そして金子市のセリフ
「わしわな、これで人間になった気がするよ。
人のために喜んで死ねるようなら、人間、一人前じゃないかなぁ…」

若干27才の監督が撮った
純粋な娘のために命を懸ける
この荒くれ者たちの心意気は何だろう?

そして、いつも心に残る切なさ…
これだから山中貞雄はやめられない。
by omocha_y | 2006-07-09 08:53 | 映画


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